致道ブログ

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はじめての町

今、秋の展覧会に向けて、
茨木のり子さんの詩を読みなおしています。

現代を代表する詩人のひとり 茨木のり子さんは、
お母様が三川町出身、
ご主人の医師 三浦安信さんも鶴岡市出身という、
鶴岡ととってもご縁のある方。

2006年にお亡くなりになりましたが、
海を見下ろす加茂の浄禅寺に
ご主人とともに静かに眠っていらっしゃいます。

1999年には
旧鶴岡市の市制施行75周年を記念して、
茨木のり子さんの詩に、
鶴岡市出身の作曲家 佐藤敏直さんが曲をつけた
合唱組曲「はじめての町」が生まれ、
話題になりました。

この詩は、どこの町とは書いていないけれど、
鶴岡や庄内のことが書かれているのだと感じて、
何となく懐かしく、そして優しい気持ちになれます。



「はじめての町」
 
はじめての町に入ってゆくとき
わたしの心はかすかにときめく
そば屋があって
寿司屋があって
デニムのズボンがぶらさがり
砂ぼこりがあって
自転車がのりすてられてあって
変わりばえしない町
それでもわたしは十分ときめく

見なれぬ山が迫っていて
見なれぬ川が流れていて
いくつかの伝説が眠っている
わたしはすぐに見つけてしまう
その町のほくろを
その町の秘密を
その町の悲鳴を

はじめての町に入ってゆくとき
わたしはポケットに手を入れて
風来坊のように歩く
たとえ用事でやってきてもさ

お天気の日なら
町の空には
きれいないろの淡い風船が漂う
その町の人たちは気づかないけれど
はじめてやってきたわたしにはよく見える
なぜってあれは
その町に生まれ その町に育ち けれど
遠くで死ななければならなかった者たちの
魂なのだ
そそくさと流れていったのは
遠くに嫁いだ女のひとりが
ふるさとをなつかしむあまり
遊びにやってきたのだ
魂だけで うかうかと

そうしてわたしは好きになる
日本のささやかな町たちを
水のきれいな町 ちゃちな町
とろろ汁のおいしい町 がんこな町
雪深い町 菜の花に囲まれた町
目をつりあげた町 海のみえる町
男どものいばる町 女たちのはりきる町
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by ChidoMuseum | 2009-08-13 12:33 | 展覧会 | Comments(0)