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出羽三山に導かれて

「ミラクル!祈りの眼差し 稲田美織 出羽三山写真展」が2019年6月22日から8月4日まで開催中です。
稲田美織さんの「出羽三山に導かれて」を掲載しました。

「出羽三山に導かれて」

初めてこの地を訪れたのは、今から10年前、なんと山伏の方々と月山頂上、そして湯殿山へと雨の中を1日で縦走することから始まりました。冷たい雨の中をただ一生懸命歩き、鎖場を必死で下り、やっとのことで湯殿山本宮に辿り着いたのです。そして「語ることなかれ、聞くことなかれ」と言われている、神秘のご神体に参拝させていただきました。その想像を超えた御神体は衝撃的で、また何かに抱かれるような暖かさを感じました。そしてようやく雨もあがり、眼下には、この世のものと思えない美しい光景が広がっていたのです。雲はまるで大海のようにたなびき、山々が島のように現れて、それは美しい墨絵のようでした。そこに湯殿山の大きい赤い鳥居だけが、色彩を持ち、雲海に浮かんでいたのです。私の初めての出羽三山は、山の厳しさとそのご神体の神秘を体と心と魂のすべてで受け止めるような体験でした。
 私が、写真家として聖地を撮影するようになったのは、2001911日に起こったアメリカ同時多発テロを自宅から目撃したことから始まりました。目の前で3千もの人々の命が一瞬にして消えてしまったのです。17年間、ニューヨークに住んでいましたが、9.11によってこれまでの自分の中の価値観は大きく変わってしまいました。100以上の人種と言語が存在するニューヨークで、人々が友人として仲良くなってゆけば、いつしか宗教や人種などの壁を越えて、世界中が平和になってゆくものだと信じていました。私にとって、世界の縮図であるニューヨークで、あのようなテロが起きたことに絶望しました。神様が本当にいらっしゃるのならば、なぜあんな悲劇を起こすのか、神様は私たち人類をどこに導こうとされているのかと。そして私は、世界中のあらゆる聖地を巡り、カメラに収めてゆきました。
 その中できがついたことは、一神教の世界では、自分の信じる神様以外には祈ることは難しいということです。日本人は、お正月に神社に行き、結婚式はキリスト教会であげ、お寺で法事することには何も違和感がなく、最初は節操がないのかと思っていたのですが、そのすべてを受け入れ、祈る感覚こそが、平和への大切な感性だったのではないかと気がついたのです。
 山伏たちは山にひれ伏すという字のごとく、自然に畏敬の念を持ち、羽黒山は現世、月山は死後の世界、湯殿山は来世といわれ、三山を巡ることは、江戸時代には「生まれ変わりの旅」として広がりました。それは日本古来の山岳信仰ともつながります。山伏の方々は現世の自分を葬り、白装束をつけて山で無心に修行し、天地のエネルギーをいただき、擬死再生によって新しい自分に生まれ変わるのです。霧の中の月山は、異次元の世界のようです。現世の様々な執着を捨てて無になることは、現代社会ではとても大切なことかもしれません。また湯殿山ではまるで母なる大地から新しい命として生まれ出るような体感を得られます。私はNYで同時多発テロを目撃した時に同じ肉体なのに、生まれ変わったような経験をしました。そして死によって生きることを学ぶのだと思いました。また蜂子王子によって開山された出羽三山は、神様も仏様も大切にし、その懐の大きさこそ、日本人が本来もつ寛容性なのだと思いました。
 四季の循環は、人類が生まれるずーと前から続いています。それはあらゆる命の源となり、これから先も永遠に繰り返されてゆくのです。私たちは、その大いなる宇宙の摂理の中で自然の一部として生かされているのです。この展覧会を通じて出羽三山の奇跡の美しさが伝わりましたら、幸せです。

出羽三山には、鶴岡市出身の小説家・藤沢周平さん原作の映画「蝉しぐれ」に出演された、親友の原田美枝子さんに2010年に導いていただきました。そして、映画「蝉しぐれ」はこの致道博物館の館長である酒井忠久さん、天美さんとの深いご縁があり、このように素晴らしい機会を頂けましたこと、感謝いたします。       

令和元年6月吉日                  写真家 稲田美織

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●出羽三山
日本遺産・自然と信仰が息づく「生まれ変わりの旅」認定。
羽黒山 414m・月山 1984m・湯殿山 1504mの総称が出羽三山。月山を主峰として羽黒山と湯殿山が連なって、優美な稜線が特徴です。約1400年以上も前、崇峻天皇の御子蜂子皇子が開山したといわれ、羽黒修験道の行場であり中枢となっています。羽黒修験道は、羽黒は現世の幸せを祈る山(現在)、月山は死後の安寧と往生を祈る山(過去)、湯殿は生まれ変わりを祈る山(未来)と見たてることで、生きながら新たな魂として生まれ変わることができるという巡礼は江戸時代に、現在・過去・未来を巡る「生まれ変わりの旅」となって広がりました。 
●稲田美織 略歴
写真家・多摩美術大学油絵学科卒
2010年から現在まで出羽三山を公式に撮影する。
2018年出羽三山神社カレンダーの写真、2019年数冊の写真集「日月巡礼 出羽三山」と出羽三山公式本出版。2016年伊勢志摩サミットでは写真書籍全編英語版「Ise Jingu and the Origins of Japan」がG7の首脳陣に公式に渡された。同時期外国人特派員協会で展覧会開催。ハーバード大学フォトグラフィックコレクションで初個展、ニューヨーク工科大学、在日ポーランド大使館、駐日ウクライナ大使館、イスラエル美術館、モナコ日本庭園、上海で国交正常化正式行事展覧会を開催。ワシントンDC展覧会でワシントンポストで特集さる。2013年東京国立博物館「大神社展」に写真を出品、2014年国連、コロンビア大学、ブルックリン植物園で展覧会開催。神道文化会から文化賞受賞等。

by ChidoMuseum | 2019-06-23 17:11 | Comments(0)